川が町を作った
高知県の北西、四国山地の県境に仁淀川町がある。町の面積の九割が山林だ。その中央を西から東へ、仁淀川が流れている。国道33号はこの川に沿って走り、高知市と松山市を結ぶ。町はこの川と道に沿って細く伸びている。
川が深く刻んだ谷間だからこそ、この町は存在する。中津渓谷、岩屋川渓谷、安居渓谷。いくつもの渓谷が町を囲む。沈下橋が何本も架かっている。久喜沈下橋は高知県で最古だ。川が増水すれば橋は水に沈む。それでも人は川と暮らしてきた。
川の側で、一夜を過ごす
この町に寄付すると、宝来荘での一泊二食が届く。民宿だ。仁淀川の側に建つ。

夕方、川の音を聞きながら部屋に入る。本館の和室。窓を開けると、川風が入ってくる。夜明け前、鳥の声で目が覚める。朝食を食べて、川を見つめながら茶を飲む。

この町に来る理由は、渓谷を歩くこと、沈下橋を渡ること、川の流れを見ることだ。そしてその夜、川の側で眠ること。宿はそのための場所だ。都市から遠く、山深い。だからこそ、川の音が耳に残る。
仁淀川町は、川が作った町である。その川の側で一夜を過ごすことは、この町の本質を体験することだ。