吉野川が運ぶ、米の季節
阿波市は吉野川の北岸に位置する。南側は吉野川のデルタ地帯の平野で、水田率が84%を超える。つまり、この町の顔は米だ。
阿波ノ北方米は、その名の通り吉野川北岸で育つコシヒカリ。届いた時点で、粒の揃い方を見ればわかる。炊く前に米を研ぐ手に、吉野川が運んだ土の手触りが残る。水加減は普通より少なめ。北方の米は、吸水が早い。炊き上がりは、粒が立つ。朝食の茶碗に盛ると、白さが違う。昼には冷めても、握り飯にすると手のひらに吸い付く粘りがある。秋から冬、新米の季節に届けば、家の食卓は一ヶ月、この米に支配される。定期便を選べば、春先まで季節の米を食べ続けることができる。

肉と酒、食卓の厚み
米だけでは食卓は成り立たない。阿波華牛の焼肉は、A5等級の黒毛和牛。厚切りの切り落としは、焼肉の鉄板に乗せた時点で脂が音を立てる。タレに漬けず、塩で食べる。米と一緒に食べると、脂の甘さが米の甘さを引き出す。

晩酌には、地酒の飲み比べセット。特別本醸造から純米吟醸まで、5本の720ml瓶は、一週間の夜を埋める。山田錦を使った吟醸は、米の香りがする。同じ吉野川流域で育った米が、別の形で食卓に戻ってくる。ロックで飲めば、氷が解けるにつれ、香りが変わる。
四国八十八箇所の札所が4つある町。遍路の文化が根強いこの地では、食べることも、飲むことも、季節の手当てのひとつだ。
