筆の町が、酒を醸す理由
熊野町は筆の町だ。全国一のシェアを誇る熊野筆の産地として、白鳳堂、竹宝堂、広島筆産業といった製造業者たちが、毛を選び、軸を削り、毛を植え込む仕事を続けている。その仕事は、毛の一本一本の質感を見分ける目と、手の感覚を何十年も積み重ねた職人たちの手にある。
この町で酒を造る蔵元たちも、同じ精度を求めている。清酒 大号令 蔵生地は、そうした町の気風を映した一本だ。蔵生地(くらなまじ)という名は、蔵元が生の状態で瓶詰めした、加熱処理を最小限に抑えた清酒を指す。米を蒸し、麹を育て、酵母を働かせ、搾る。その過程のどこかで手を抜けば、味は濁る。筆の毛を一本選ぶのと同じように、酒造りも妥協を許さない。

熊野盆地を四方の山々が囲む地形は、昼夜の気温差をもたらす。そうした風土が、米の甘みと酸のバランスを整える。晩酌の盃に注いだとき、米の香りが立ち、後口に清涼感が残る。それは、この町の職人たちが何百年も積み重ねてきた、手仕事の精度そのものだ。
家の食卓に、町の手仕事を
1.8リットルの瓶は、夫婦で毎晩一杯ずつ、二週間ほどの晩酌に足りる量だ。冷蔵庫の奥に立てて置き、夜の食事のあとに、ぬるめの盃で飲むのがいい。米の甘みが、その日の疲れをそっと溶かす。

この町に寄付すると、その返礼として、筆の町が醸した酒が家に届く。それは単なる商品ではなく、熊野の職人たちが米と水と時間をかけて作った、一つの仕事の結果だ。
