山を削った鉄が、米を育てた
奥出雲の棚田を見ると、その段々の形が少し不自然に見える。なぜなら、ここは元々、たたら製鉄の場所だったから。砂鉄と木炭を求めて山を切り崩し、その跡地を水が引けるように整形し直した。二次産業から一次産業へ。千年の鉄づくりが終わった後、その痕跡が農地に生まれ変わった。その歴史が、今も棚田の形に刻まれている。
仁多米は、そうした風景の中で育つ。中国山地の準平原面、200~400メートルの高さで、冷たい水が流れ、朝霧が立つ。米作りに必要な条件が、たたら製鉄の遺産と重なっている。白亜紀の花崗岩が風化した土、斐伊川の支流が運ぶ水。この町全体が豪雪地帯であることも、米の味わいに関わる。冬の厳しさが、春の芽吹きを強くする。

届いた米を炊く時、私は水加減をいつもより少し少なめにする。仁多米は吸水性が高く、粒がしっかりしているから。炊き上がると、一粒一粒が立つ。白さが違う。冷めても硬くならない。おにぎりにしても、翌日の弁当でも、米の甘さが残る。毎日の食卓に、この町の地層が積み重なっていく感覚がある。
鉄の町の、今の顔
定期便で3キロずつ8回という選択肢もある。一人暮らしや少人数の家では、この小分けが現実的だ。米は湿度に敏感で、開封後は風味が落ちていく。だから、食べ切るペースに合わせて届く方が、いつも新しい米を食べられる。季節ごとに、その時の収穫の米が家に来る。春から冬へ、米の表情が少しずつ変わるのを感じながら食べる。

奥出雲には、米以外にも、この町の手仕事が返礼品として届く。玉鋼という大吟醸は、この町で生まれた「玉鋼」——日本刀の原料となる和鋼——の名を冠した酒だ。日本で唯一、たたら製鉄を今も操業する日刀保たたらがある町だからこそ、こうした名前が生まれる。晩酌の時、米と酒の両方が奥出雲から届いている。その重ねあわせが、この町を食卓に呼び込む。

奥出雲和牛の切り落としも、同じ風景の中で育った肉だ。棚田と同じ高さで、冷たい空気の中で育つ牛。米を食べ、水を飲み、季節の移ろいを体に受ける。切り落としは、すき焼きにも、炒め物にも、煮込みにも使える。米と一緒に食べる時、この町の土地が、一つの食卓に集まる。