山里の水が、細い糸になる
宍粟市の台所に届く返礼品を選ぶなら、まずこの町の地形を見つめたい。兵庫県の中西部、山々に囲まれた盆地。揖保川と千種川という二つの一級河川が流れ、その水は冷たく、清い。この水こそが、宍粟の手延べそうめんを生んだ。
揖保乃糸の特級品は、山崎町と一宮町で今も作られている。江戸の時代から続く製法で、小麦粉と塩と水を合わせ、何度も何度も手で延ばし、乾かす。その過程で、素麺は透き通るほど細くなる。特級品の黒帯は、最も厳しい基準をクリアした逸品だ。

届いた箱を開けると、束ねられた素麺が静かに詰まっている。夏の盛りに、冷たい水で冷やし、つゆに浸して食べる。その時、素麺は単なる食べ物ではなく、この町の水と手仕事の記憶を口に運ぶ。冬の温かいにゅうめんもいい。素麺は季節を選ばない。保存も簡単で、台所の奥に置いておけば、いつでも山里の味が呼び起こせる。
走る足を支える、もう一つの手仕事
宍粟市は、ものづくりの町でもある。セイバンやミズノといった大手メーカーが波賀町や千種町に工場を持ち、靴やスポーツ用品を作り続けている。その中で、ミズノのランニングシューズも返礼品として選べる。

これは、山里の工業技術が、走る人の足を支える形だ。ジョギングやマラソンに向けた設計は、この町の職人たちの手から生まれている。毎日の走りに、宍粟の技術が寄り添う。
寄付の先にある、町の営み
宍粟市は、2005年に四つの町が合併して誕生した。山崎、一宮、波賀、千種。それぞれが古い歴史を持ち、それぞれが今も生きている。林業を主産業とし、農商工連携を進め、過疎化と向き合いながら、地域創生に取り組む町だ。
この返礼品たちは、その営みの一部である。素麺の細い糸も、靴の一足も、町の人たちの手と知恵が詰まっている。寄付は、その手仕事を支える道筋になる。
