加古川沿いの米作りの風景
小野市は兵庫県の中南部、加古川が南流する盆地にある。神戸と姫路のほぼ中間に位置し、戦後は工業化が進んだが、その足元には古い米作りの営みが今も続いている。この町で育つ米は、山田錦を中心とした品種。山田錦は酒造好適米として知られるが、小野ではそれを食卓用にも作り続けている。
三種の米、各5kgが届く。コシヒカリ、ヒノヒカリ、キヌヒカリ。同じ土地で育った三つの品種を、食べ比べる形だ。無洗米なので、研ぐ手間がない。朝、急いでいる時も、米を炊く準備は素早い。

食卓に着地する、三つの違い
コシヒカリは粘りが強く、握り飯にすると握りやすい。弁当に詰めても、時間が経ってもほぐれにくい。ヒノヒカリは粘りが控えめで、さっぱりとした食べ口。夏場の食卓では、冷やご飯にしても米粒が立つ。キヌヒカリは甘みが引き立つ品種で、おかずが少ない日の夜ご飯でも、白いご飯だけで箸が進む。

三種を一度に手に入れることで、季節や気分、その日の献立に合わせて米を選ぶ余裕が生まれる。春先は粘りのあるコシヒカリで、夏はヒノヒカリで、秋口はキヌヒカリで甘みを味わう。そうして一年を通じて、同じ加古川沿いの土地が育てた米の表情の違いを、台所で感じることになる。
小野は古くからそろばんと刃物の町として知られ、その手仕事の文化が今も息づいている。だが米作りもまた、この町の静かな営みの一つだ。播州の米を、毎日の食卓に迎える。それは、この町の風土を家の中に引き入れることでもある。
