海峡の潮が仕事をする町
明石は、淡路島との間の海峡に面した町だ。古代から畿内と西国を結ぶ海上交通の要所で、陸でも山陽道の駅家が置かれていた。その地理が、今も台所に息づいている。
明石海峡は潮流が速い。その流れの中で育つ穴子と、海苔。この二つが、明石の食卓を支えてきた。私は、この町の返礼品を選ぶとき、その海峡の仕事ぶりを感じさせるものを探した。
穴子—焼きたての香りが家に届く
本焼きあなごは、届いた時点で既に焼き上がっている。串から外して温め直すだけで、夜の食卓に乗る。穴子の身は淡白で、焼くことで香りが立つ。白いご飯の上に乗せれば、それだけで一杯。酒の肴にもなる。

穴子漁は季節ものだ。明石の台所では、旬の時期に塩漬けにしたり、こうして焼いて保存食にしたりしてきた。返礼品として届く焼き穴子は、その保存の知恵を形にしたものだ。冷蔵庫に常備しておけば、朝の弁当にも、夜の一品にも使える。
海苔—毎日の食卓の脇役
明石海苔の詰め合わせは、一見地味だが、毎日の食卓を支える。一番摘みの海苔は香りが高く、ご飯に巻いても、味噌汁に浮かべても、その香りが活きる。

明石の海苔は、海峡の潮流が運ぶ栄養分を吸収して育つ。色が濃く、香りが強いのはそのためだ。味付け海苔も用意されているので、そのまま食べることもできる。子どもの弁当に、朝食の一品に。毎日使うものだからこそ、質の良いものが家にあると、食卓の質が変わる。
酒どころとしての明石
明石は、江戸時代初期から酒造りが行われてきた町だ。神戸の灘に対して「西灘」と呼ばれ、300年以上の歴史がある。現在も市内に6つの蔵元が酒造業を営んでいる。
地ウイスキーあかしは、この町の新しい顔だ。ウイスキーは、かつての酒造りの技術と、新しい時代の挑戦が出会ったものだ。晩酌の時間に、ロックで飲むもよし、水を足して飲むもよし。明石の水で仕込まれたウイスキーは、この町の風土を液体にしたようなものだ。
選び方—季節と保存を考える
明石の返礼品を選ぶなら、穴子と海苔のように「毎日使うもの」と「季節の贈り物」を組み合わせるといい。穴子は焼き上がっているので、届いたその日から食べられる。海苔は保存がきくので、ストックしておける。
神戸牛も返礼品に含まれているが、明石の顔を知りたいなら、海峡が育てた穴子と海苔から始めるのがいい。その後で、酒や肉を加えていく。そうすることで、この町の食卓の全体像が見えてくる。