斜面に広がる果樹園、その季節の手当て
山ノ内町は、面積の90%以上が山林原野だ。東西39km、南北12kmの細長い地形の中で、河岸段丘や扇状地に集落と田が点在し、その脇に果樹園が斜面に沿って広がっている。リンゴ、ブドウ、モモ——江戸時代から続く原野開拓の歴史の中で、耕作地の少なさを補うために開かれた土地だ。
志賀高原の麓で育つ白鳳の桃は、その斜面の産物そのものだ。火山活動の影響で形成された火山性の地質、標高差がもたらす昼夜の寒暖差——こうした条件が、果実に濃い甘さと香りを与える。届いた桃は、夏の盛りに家の台所に着地する。冷蔵庫で冷やし、朝食のテーブルに置く。皮を剥くと、白い果肉が現れ、汁が手を伝う。そのまま食べるのが最も素直だが、半分に割って種を取り、ヨーグルトに浮かべるのも良い。日中の暑さの中で、この冷えた桃を食べる時間は、その土地の季節そのものを口に含むことになる。

秋には、同じ斜面からサンふじのリンゴが届く。10kgという量は、一人の家庭では数ヶ月の付き合いになる。冷暗所に保管し、毎朝一個、皮ごと齧る。あるいは、芯を取り除いて薄切りにし、塩をひとつまみ振ってサラダに混ぜる。焼き菓子の季節が来たら、芯を取った半割りをバターで炒め、砂糖をかけて温かいまま食べるのも、この町の秋の手当てだ。

高原の水が醸す、地元のビール
志賀高原の湿原や池から流れ出る水は、町の産業を支えてきた。かつては薬草を朝廷に献上し、江戸時代には竹細工や木工品、薪や炭の生産が主だった。今、その清冽な水を使って醸されるのが志賀高原ビールだ。クラフトビールの6種セットは、この町の水と、職人の手による発酵の時間を瓶に詰めたものだ。晩酌の時間に、冷えたグラスに注ぐ。苦味、香り、喉越し——それぞれの銘柄が、高原の季節の移ろいを映している。
温泉地としての厚み
この町には60近くの外湯と160近くの温泉宿泊施設がある。湯田中渋温泉郷は、江戸時代から湯治場として機能してきた。楽天トラベルクーポンを使えば、町内の対象施設で宿泊できる。火山活動の影響で形成された温泉地で、夜間瀬川の流域に沿って温泉が湧く。冬の降雪が多い季節、あるいは秋の紅葉の時期に、この町を訪れ、温泉に浸かる。その時間は、返礼品としての体験ではなく、この町の歴史と地形が生んだ自然の恵みを、身体で感じることになる。
