山の水が、ウイスキーになるまで
宮田村の西端に木曽駒ヶ岳がそびえ、東に天竜川が流れる。この地形が、この村の産業を決めた。
本坊酒造のマルス駒ヶ岳蒸溜所は、その立地を最大限に活かしている。中央アルプスから流れ落ちる清冽な水——それは何十年も山の地層を通ってきた水だ。ウイスキーづくりにおいて、水の質は樽の味わいと同じくらい重要だ。私はこの村を、「山と川に挟まれた、水の通り道」と見ている。
マルス モルテージ 越百は、その蒸溜所が生み出した一本だ。モルトセレクションという名の通り、複数の樽で熟成させたモルトをブレンドしている。ボトルを手にした時、ラベルに「越百」と書かれているのは、中央アルプスの峰々を越えてきた時間を意味しているのだろう。晩酌の時間に、グラスに注ぐと、その香りの中に山の空気が混ざっているように感じる。これは、この村でしか作られない味わいだ。

地ビール職人たちの、季節の仕事
同じ村で、南信州ビールの職人たちも、別の形で山の恵みを形にしている。

南信州クラフトビール「Ogna」と「ヤマソーホップ」は、小規模な醸造所が、季節ごとに仕込む地ビールだ。ビール造りは、仕込みから瓶詰めまで、数週間の工程を要する。その間、温度管理、酵母の状態、ホップの香りの変化——すべてが職人の目と手に委ねられている。

この村の地ビールが、単なる「地元の味」ではなく、飲み手の食卓に季節をもたらすのは、そうした日々の仕事があるからだ。夏の夜、冷えたグラスに注いだ一杯は、その職人たちの手仕事の結果である。
米と、水と、時間
宮田村は「宮田式農業」で知られている。この村の農家たちは、山からの水を引き、その流れを田に導き、米を育ててきた。宮田村産コシヒカリは、その農業の直接的な成果だ。
玄米で届く米は、家の精米機で、あるいは地元の精米所で、白米に変わる。その過程も、この村の暮らしの一部だ。炊きたての米の香りは、中央アルプスの水が育てた香りでもある。
ウイスキー、ビール、米——この村の返礼品たちは、すべて「水と時間」という共通の素材から生まれている。それぞれの職人や農家が、その素材とどう向き合い、どう時間をかけるかで、異なる表情を持つようになる。この村に寄付することは、そうした仕事の継続を支えることでもある。