手取川の水が焼酎になるまで
能美市は、金沢の南西20キロ、加賀平野の中央に位置する。根上町、寺井町、辰口町の三町が2005年に合併して発足した町だ。私がこの町を見るとき、最初に目に入るのは手取川である。市の北部を流れるこの川は、豊富な伏流水をもたらし、電子部品や繊維関連の企業が立地する産業基盤となってきた。だが、その水の恵みは工業だけに留まらない。
のみよしのはと麦焼酎は、この伏流水を仕込み水として使う焼酎だ。はと麦を原料にした焼酎は珍しい。爽やかな香りとマイルドな味わいという説明だけでは、この品の本質は見えない。焼酎造りは、原料の選定から仕込み、蒸留、熟成まで、数ヶ月の時間を要する。手取川の水質がもたらす、その土地でしか出せない風味がある。晩酌の盃に注ぐとき、加賀平野の地下水脈が、ここまで届いていることを感じる。

米と調味料、食卓に根ざす
能美市の農業は、同じく手取川の恵みの上に成り立っている。ミルキークイーンと加賀百万石特別栽培米コシヒカリは、この地で育った米だ。ミルキークイーンは粘りが強く、冷めても硬くなりにくい。毎日の朝ごはんに、おにぎりに、その特性が活きる。コシヒカリは玄米での提供。自宅で精米する手間をかけることで、米の鮮度と風味を自分の手で管理できる。

そして、おいしい本みりん「のみりん」。焼酎と同じく、この町で作られる調味料である。本みりんは、もち米と麹を塩漬けにして、時間をかけて糖化させる。数ヶ月の熟成を経て、初めて家の台所に届く。煮物の照りを出し、甘辛い味わいを整える。米を育てた土地で、米を使った調味料も作られている。その循環が、この町の食卓を支えている。
能美市の返礼品は、派手さより、地道さを語っている。手取川の水、加賀平野の土、そこで働く人たちの時間。それらが、毎日の食卓に静かに着地する。
