山麓の盆地で米を作る
桜川市は茨城県の中西部、筑波山地の北西麓に位置する。南北20km強の縦長の市域は、北部の鶏足山塊から南部の筑波山地へと連なり、その間を桜川が貫いて流れる。市の中部から西側は関東平野の北東の縁にあたり、平地が広がる。岩瀬盆地、羽黒盆地といった盆地地形が水田を育ててきた土地だ。
私がこの町を見ると、山と平地の境界線上にある農村が浮かぶ。冬の冷たい風が山から吹き下ろし、春には盆地に水が張られ、夏の日差しが稲を育てる。そうした季節の手当てが、米作りの基本になっている。
羽鳥米は、その風土を最も体現する返礼品だ。「幻の米」という呼び名は市場向けの修飾だが、実際には筑波北麓の限られた地で作られるコシヒカリである。盆地の水、山からの清水、そして昼夜の気温差が、米粒に甘みと粘りをもたらす。届いた米を炊くとき、その土地の季節が一粒一粒に詰まっていることに気づく。定期便を選べば、秋から冬にかけて何度も同じ米が家に届く。毎月の食卓で、同じ田んぼの季節の移ろいを食べることになる。
常陸牛、肉の質感
桜川市の産業は農業だけではない。北東部の羽黒地区、南部の真壁地区は日本有数の採石地であり、石材業が盛んだ。真壁御影石は国の伝統工芸品に指定されている。だが食卓に届く返礼品として、もう一つの産業がある。それが常陸牛だ。
常陸牛のすきやき・しゃぶしゃぶ用は、霜降りの肉を薄く切ったもの。冬の夜、鍋を囲むときに活躍する。肉が湯に落ちると、脂が白く浮かぶ。その瞬間、肉の質感が変わる。口に入れると、繊維がほぐれ、脂の甘みが広がる。この肉がどこで育ったのか、どんな飼料を食べたのかは、返礼品の説明には書かれていない。だが、茨城県産という産地の名前だけで、その土地の気候と水、そして飼い手の手間が肉に刻まれていることを、食べ手は知っている。

小玉スイカと、季節の先取り
桜川市は「ミカン栽培の北限と言われている」という記述がある。気候が比較的温暖だということだ。そうした気候の中で、夏の果実も育つ。こだまスイカは、小玉で2玉から5玉まで選べる。家族の人数に合わせて、必要な分だけ届く。スイカは足が早い果実だ。届いたら数日のうちに食べなければならない。その急かされるような時間の中で、夏を感じる。冷蔵庫で冷やし、切ると、赤い果肉と黒い種が現れる。その色合いだけで、季節が確定する。

桜川市産のコシヒカリも、羽鳥米と同じ土地の米だ。こちらは令和7年産の先行予約で、春に申し込んで秋に届く。米作りの一年を、寄付から食卓までの時間の中で体験することになる。
