盆地の牛、焼肉の手仕事
三股町は都城盆地の東縁にある。西に広がる盆地、東に鰐塚山地。その間の町で、牛が育つ。宮崎県の畜産は全国でも指折りの規模だが、三股町はその中でも、焼肉文化が根付いた土地だ。
カルビ焼肉は、外国産牛肉を特製タレに漬けたもの。届いた時点で、すでにタレが肉に馴染んでいる。これは単なる「漬け込み」ではなく、焼肉屋の台所で毎日繰り返される手仕事だ。肉を切り、タレを合わせ、時間をかけて味を入れる。その工程が、家の食卓に着地する。

夏の夜、炭火か小さなホットプレートで焼く。タレが焦げ香ばしくなり、肉の脂が滴る。白いご飯、冷えたビール。盆地の夜風の中で、これが日常になる。量は選べる。500g、1kg、1.5kg。家族の人数、その夜の気分で選ぶ。
国産牛ホルモンと、季節の鍋
同じ手仕事で、国産牛ホルモンも届く。丸腸を特製タレに漬けたもの。ホルモンは、焼肉文化の中でも特に「手間」が見える部位だ。下処理、塩漬け、タレ漬け。それらを経て、初めて食卓に上がる。

秋から冬、鍋の季節になると、このホルモンの出番が増える。もつ鍋に、キャベツ、ニラ、豆もやし。タレが効いているから、追い足しの調味は最小限。土鍋の中で、ホルモンがふっくら戻る。その時間が、家族の時間になる。

定期便で、季節を食べる
宮崎牛のスライス定期便は、3ヶ月間、毎月1.5kgが届く。すき焼き、しゃぶしゃぶ、鍋。季節ごとに、食べ方が変わる。春は薄く、夏は冷しゃぶ、秋冬は鍋。同じ牛肉でも、季節の手当てで表情が変わる。
三股町は、都城市と一体化した市街地を持ちながらも、独立した自治体として残った。2021年には「幸福度」で全国3位、九州1位にランクインした。その幸福の一部は、こうした日常の食卓にあるのだと思う。盆地で育った牛が、タレの手仕事を経て、家に届く。それだけで十分だ。