港町の台所に、黒毛和牛が届く
苓北町は天草諸島の下島、西は天草灘、北は千々石灘に面した細長い半島の町だ。江戸時代には天草全土の政治経済の中心地で、富岡には代官所が置かれていた。その後、天草陶石の産地として、また炭鉱の町として栄えた。今は火力発電所が立地し、町の財政を支える。
そうした産業の変遷の中で、この町の食卓は何を大事にしてきたのか。私が注目するのは、黒毛和牛の切り落としだ。

港町の家庭では、肉は日々の手当てが現実的だ。一度に大量に使うのではなく、500グラムから1キロ、1.5キロと選べる量で、冷凍庫に常備する。夜の支度で、凍ったまま鍋に入れる。すき焼き、牛丼、炒め物。季節ごと、その日の野菜や米とあわせて、台所の手が決める。小分けされた返礼品は、そうした現実的な食べ方を前提に設計されている。
黒毛和牛そのものの質は言うまでもないが、この町で牛を育てる営みがあること、そしてそれが寄付を通じて家に届く仕組みが、苓北町の産業と食卓をつなぐ。
米は、定期で、季節ごとに

定期便で12ヶ月、隔月6回の配送を選ぶと、春から冬へ、新米から古米へと季節が米袋に刻まれる。5月の新緑の時期に最初の便が届き、秋口には新米が家に入る。米の味わいは季節とともに変わる。その変化を、毎月の食卓で感じることになる。

港町の家では、米は常に必要だ。定期配送は、買い物の手間を減らすだけでなく、季節の移ろいを米を通じて意識させる。苓北町の米作りの営みが、年間を通じて家の食卓に着地する。
黒毛和牛も米も、この町で育てられ、港から出荷される。寄付は、そうした営みへの応援であり、同時に自分たちの食卓を季節ごと、月ごとに満たす手段になる。