カルデラの底で、牛は何を食べるのか
阿蘇市は、阿蘇山が作ったカルデラ盆地の北側、阿蘇谷に位置する。年間降水量が3000mmを超え、冬は-14℃まで下がる。夏でも猛暑日がない。この厳しさが、阿蘇の赤牛を育てている。
赤牛——褐色和牛——は、この冷涼な気候で、ゆっくり時間をかけて育つ。濃い赤褐色の肉質は、寒冷地の牧草地で鍛えられた筋肉の色だ。私は、この牛を『阿蘇の地そのものを食べる』と考えている。
赤牛のすき焼きセットは、1.1kgの肉が届く。冬の夜、家族で囲む鍋に、この肉を入れる。火が通ると、赤褐色の肉は濃い茶色に変わり、脂が白く浮く。口に入れると、噛むたびに肉の甘みが広がる。これは、阿蘇の寒さと雨が、何年もかけて作った味だ。

焼いて、炙って、季節の食卓へ
すき焼きだけではない。ヒレステーキは、100g×3枚。厚みのあるステーキは、塩をふって強火で焼く。表面が香ばしく焦げ、中はほのかにピンク色を残す食べ方が似合う。赤牛の赤身は、焼くことで初めて本当の味になる。

ランプステーキは、150g×5枚。ランプは牛の腰から腿にかけての部位で、赤身が強い。バーベキューで焼くなら、この肉だ。炭火の上で、肉の表面が焦げ、脂が滴る。阿蘇の風が吹く中での一枚は、家での調理とは別の時間になる。

赤牛は、冷凍で届く。解凍は、冷蔵庫で一晩。焦らない。この牛が育つのに何年もかかったのだから、食卓に上がるまでの数時間は、当たり前の手間だ。
阿蘇の産業は、観光と農畜産
Wikipediaの統計では、阿蘇市の産業は第3次産業(観光)が過半数を占める。だが、第1次産業の農畜産がなければ、この町の観光も成り立たない。赤牛は、その象徴だ。
市内には『いまきん食堂』『郷土料理 お食事処 はなびし』など、赤牛を専門に扱う飲食店が複数ある。観光客が訪れるのは、この牛を食べるためでもある。だが、ふるさと納税で赤牛を受け取ることは、観光地を訪ねることとは違う。自分の台所で、自分のペースで、この牛と向き合う時間を持つことだ。
阿蘇の赤牛は、決して『グルメ』の対象ではない。それは、カルデラの底で、寒冷な気候に耐えながら育った、一頭の牛の肉だ。その肉を、家族で分け合い、季節の食卓に着地させる。それが、この返礼品の本質である。