島と橋、そして海の恵みの地理
上天草は、天草諸島の東部に位置する島々の集合体だ。大矢野島、維和島、野釜島、野牛島——複数の島が天草五橋で繋がり、一つの市を形作っている。この地形が、この町の食卓を決めている。
橋で繋がった島々の周囲は、瀬戸内海のような穏やかな海ではなく、不知火海という潮流の激しい海だ。その海が、クルマエビ、ハモ、真鯛、ワタリガニといった季節ごとの漁獲物をもたらす。特にクルマエビは、この町の漁業を象徴する存在だ。
私がこの町を見ているのは、『観光地』ではなく『漁師の台所』としてだ。天草松島や天草五橋といった景勝地も確かにあるが、返礼品として届く食材を見れば、この町が何を生業としているかは明らかである。
活き締めされた車えび——届いた時から調理まで
匠の車えびは、この町の漁業の最前線を家に運ぶ。

『活き締め急速冷凍』という表記が、単なる商品説明ではなく、漁師の手仕事を物語っている。活きた状態で締められ、その直後に冷凍される。これは、鮮度を最大限に保つための手間であり、流通の都合ではなく、食べ手の台所を想定した処理だ。
届いた箱を開けると、300g単位で真空パックされた車えびが現れる。9尾から12尾、つまり一度の調理で使い切れる量が、複数回に分けて届く。冷凍庫に積み重ねておけば、季節を問わず、この町の海を食卓に呼び出せる。
調理は、塩焼きが最も素朴だ。解凍して塩をふり、強火で焼く。殻が赤くなり、身が透き通った白から淡いピンクに変わる瞬間が、食べ頃だ。あるいは、刺身として食べるなら、解凍後すぐに氷水で冷やし、背わたを取り除いて、わさび醤油で。車えびの甘みが、塩辛さと相まって、口の中で海を思い出させる。
この町でクルマエビが特産品とされるのは、漁獲量の多さだけではなく、この『活き締め』という手間をかける漁師の文化があるからだ。
海の季節を、複数の返礼品で味わう
天草海鮮三昧は、車えび以外の季節の魚を知る入口になる。かんぱち琉球、酢〆このしろ、たこまぶし、鯛茶漬けといった、4種類の海産物が8パック届く。

これらは、いずれも『調理済み』または『調理の手間を最小化した』形で届く。ご飯の上にのせるだけで、その日の晩酌の肴になる。あるいは、朝食の一品として、白いご飯と一緒に食べる。こうした食べ方は、島の漁師の家庭でも変わらないはずだ。
島のランチコースは、返礼品の中では珍しく『体験』の形をしている。上天草産の食材を使ったコース料理を、リゾラテラス天草で食べる。天草大王、魚介類、地元の野菜が、プロの手で調理される。この町の食材がどう組み合わされ、どう食べられるべきかを、一度は知っておく価値がある。
定期便で、季節の移ろいを受け取る
定期便の車えびは、6回に分けて1.8kg、つまり毎月のように車えびが家に届く仕組みだ。
季節によって、漁獲量は変わる。定期便で受け取ることで、その季節ごとの『その時の車えび』を食べることになる。春先の小ぶりな個体、初夏の脂がのった時期、秋口の引き締まった身——同じ『車えび』でも、季節で味わいは異なる。
こうした受け取り方は、スーパーマーケットの『通年供給』とは異なる。この町の漁業の現実に、自分の食卓を合わせることになる。それは、不便さではなく、その土地と繋がる方法だ。
上天草への寄付は、観光地への寄付ではなく、この町の漁師の手仕事を、毎月の食卓に迎え入れることなのだ。
