炭鉱から、食卓へ
鞍手町は、かつて筑豊炭田の中心地だった。三菱鉱業の坑口が町を支えていた時代から、今は半世紀以上が過ぎた。1971年に町内の炭鉱がすべて閉山してから、この町は何度も自分たちの足場を作り直してきた。工業団地を整備し、製造業を呼び込み、農業と畜産の力も育ててきた。
その営みの中で、私が目を向けたいのは、この町が育てた和牛だ。博多和牛の切り落としは、鞍手の台所に最も自然に着地する返礼品だと思う。

切り落としというのは、見た目では「訳あり」と呼ばれることもあるが、実際には調理する側にとって最も使いやすい形だ。400gずつ小分けされた4パックは、家族の食卓で「今夜は何にしようか」と迷わずに済む量。冷凍庫に常備しておけば、すき焼きの鍋に、牛丼に、炒め物に。季節が変わっても、手を伸ばしやすい。
和牛の脂は、加熱するたびに香りが立つ。特に秋から冬、鍋の季節になると、この切り落としの出番が増える。白菜や豆腐と一緒に煮込めば、脂が野菜に絡み、ご飯が進む。春先には、新玉ねぎと一緒に炒めて、季節の変わり目を食べる。そういう「家の食べ方」に、この品は自然に溶け込む。
季節の果実と、米の定番
鞍手の農業は、巨峰の栽培で知られている。新延・永谷地区のブドウ園は、夏から秋にかけて県外からも客を呼ぶほどだ。その季節感を家に届けるのが、いちご「あまおう」の先行予約だ。福岡産のいちごは、冬から春にかけての食卓の主役。届いた時点で、そのまま食べるのが一番だが、ジャムにしたり、ケーキに使ったり、家ごとの食べ方がある。

米は、「夢つくし」の定期便で、季節ごとに新しい米を迎える。毎月、新しい米が届く喜びは、家の食卓の基本を支える。炭鉱の町から、今は工業と農業が共存する町へ。その転換の中で、鞍手の人たちが丁寧に育ててきた食べ物たちが、寄付者の台所に着地する。それが、この町とのつながりの形だと思う。
