広見川流域の夏、ほおずきの季節
鬼北町は四万十川の上流、広見川が流れる中山間地帯だ。町の総面積の85%近くが森林で、盆地と山々に囲まれた地形は、昼夜の気温差が大きく、果実の味を濃くする。そこで育つ鬼あかりは、ほおずきの一種。名前に「鬼」がつくのは、町の地名そのものの由来となった鬼ヶ城山の北に位置することから。地名と返礼品が一体になった、この町らしい品だ。

ほおずきは夏の季語。初夏から盛夏にかけて、薄い萼に包まれた小さな実が熟れる。鬼あかりは、その実を冷凍で届ける。冷凍というのは、季節の果実を一年中の食卓に着地させるための手段だ。
冷凍で、台所に着地する
届いた冷凍のほおずきは、解凍してそのまま食べるのが素朴だ。甘酸っぱさが口に広がる。あるいはジャムに。砂糖と一緒に煮詰めれば、独特の香りと酸味が活きたジャムになる。ヨーグルトに混ぜたり、パンに塗ったり、紅茶に浮かべたり。冷凍のまま、かき氷のシロップ代わりに使う家もある。

広見川で漁獲されるアユやウナギ、モクズガニなど、この町の水辺の恵みは多い。だが農業は稲作が大半を占め、果樹栽培は限定的だ。だからこそ、ほおずきのような季節の果実は、町の人たちにとって夏の手当てであり、保存食の知恵でもある。冷凍という現代の技術が、その季節の営みを家庭の冷凍庫に運ぶ。
林業が衰退し、農業も稲作中心という町の産業構造の中で、こうした小規模な果実栽培は、地域の多様性を支える営みだ。一つの返礼品の背後には、その町で続く季節の手当てがある。
