森が町を包む地形
松野町に入ると、まず気づくのは山の迫力だ。愛媛県の南予、北宇和郡の奥まった位置にあり、森林が全面積の84%を占める。平地は少なく、河岸段丘が何段にも重なる。江戸時代の宿場町・松丸を中心に、細い谷間に人の営みが折り重なっている。
この町を流れるのは広見川。四万十川の支流であり、清流として知られ、天然うなぎや川ガニの宝庫だ。川が削った地形、その両岸に根を張る樹々、そして季節ごとに色を変える山々。この風景そのものが、松野という町の骨格である。
水際で、季節を食べる
森の国の水際のロッジは、その地形と川の関係を最も素直に体験させてくれる返礼品だ。広見川のほとりに建つ宿で、1泊2日、朝夕食付き。3名が1部屋に泊まる。

到着すれば、川音が絶えない。窓を開ければ、水が光を反射する音が聞こえ、夜間は蛙の声が層をなす。朝食は、この川が育てた季節の恵みを盛った膳だろう。夕食も同じく。桃の季節には桃が、ユズの季節にはユズが、そして天然うなぎや川ガニが、食卓に上がる可能性がある。

松野の人たちは、この川と山の間で、小さく、しかし確かに生きてきた。棚田で米を作り、河岸段丘で桃やユズを育てる。その営みが、宿の食卓に映る。寄付して届く返礼品は、単なる宿泊券ではなく、この町の風土そのものを、身体で感じるための招待状である。
小さな町の選択
松野町は、平成の大合併の時代に、単独で残ることを選んだ。周囲の町村が次々と合併する中、この町は自らの形を守った。人口は3600人余り。愛媛県内で最も小さな自治体だ。
そうした選択の背景には、この地形がある。山に囲まれ、隣町とも直接つながる一般道がない。だからこそ、この町は独自の営みを守り続けることができた。森の国というキャッチフレーズで、都市と農村の交流を図る施策も、そうした自覚から生まれたものだろう。
水際のロッジで過ごす1泊2日は、そうした町の選択と覚悟を、静かに感じさせてくれる時間になるはずだ。
