砥部川沿いの丘陵地で、みかんは育つ
砥部町は松山市の南、重信川を挟んだ場所にある。北は松山平野の南端、南へ向かうと山が増える。その中間、砥部川沿いの緩やかな丘陵地が、この町の農業の中心だ。
昭和40年代、ウンシュウミカンのブームが来た。栽培条件に恵まれない土地でも開墾され、樹が植えられた。ピーク時には1100ヘクタール以上の園地があったという。その後、全国的な生産過剰で価格は下がり、樹種転換も進んだ。今、砥部のみかん園は当時の半分ほどになっている。だが、その分、丁寧に育てられた果実が残っている。
みかんジュースは、そうした園地で採れた温州みかんを搾ったものだ。届いた時、冷蔵庫に並ぶ1リットル瓶6本。朝食のテーブルに置くと、光が透ける。コップに注ぐと、香りが立つ。ストレート果汁だから、砂糖も香料も足されていない。みかんそのものの甘さと酸っぱさが、そのまま液になっている。

冬の朝、温かい食卓で飲む。あるいは、子どもが学校から帰ってきた午後、冷たいまま飲む。1本あたりの量が手頃だから、毎日続けやすい。搾りたてではないが、家庭で搾るより手間がかからず、季節の果実を日常に置ける。
紅まどんなの季節感
同じみかんでも、紅まどんなは別の食べ方を提案する。12月上旬から1月中旬の限られた時期に届く、赤い色の柑橘。皮が薄く、房がほぐれやすい。家族で囲んで、手で剥いて食べる。その時間が、冬の家族の時間になる。

砥部町は松山市のベッドタウンでもあり、新しく移り住んだ人も多い。だが、この町の農業の歴史は古い。みかんの樹は、その人たちの家の近くで、今も育っている。返礼品として届く果実は、そうした風景の一部が、家の食卓に着地する瞬間でもある。
