醤油蔵が立ち並ぶ、塩辛い風土
小豆島町を訪れたことはなくても、この島の名前は知っているかもしれない。瀬戸内海に浮かぶ小豆島の南東部に位置するこの町は、日本におけるオリーブ栽培の発祥地であり、同時に醤油・佃煮・手延べ素麺の産地として知られている。
私がこの町を見ているのは、『塩辛い風土が生んだ食卓』という視点だ。醤の郷と呼ばれる地域には、近代化産業遺産に指定された醤油蔵が立ち並び、国の登録有形文化財90件を含む諸味蔵や佃煮工場が密集している。瀬戸内の潮風、島の地形、そして江戸時代から続く醸造の技術——これらが重なって、この町の食べ方が決まってきた。
素麺も醤油も、塩漬けの文化だ。保存食として発達し、やがて地域の産業になった。その同じ風土が、今、黒毛和牛を育てている。
推し一品:オリーブ牛のしゃぶしゃぶ
この町の返礼品の中で、最も小豆島らしいのは、オリーブ牛だと考える。

オリーブは、この島が日本で初めて栽培に成功した樹だ。地中海の気候を思わせる瀬戸内の日差しと、島の地形が生んだ産物である。そのオリーブを飼料に混ぜて育てた黒毛和牛が、オリーブ牛だ。つまり、この返礼品は『オリーブの島が、オリーブで牛を育てた』という、小豆島の歴史と現在が一つになった品なのだ。
オリーブ牛のモモ肉は、しゃぶしゃぶで食べるのが最適だ。薄く切られた肉を、沸騰した出汁にくぐらせる。肉の甘みが、瞬間に引き出される。オリーブの香りは強くはないが、後味に、島の風が通り抜けるような爽やかさが残る。

家の食卓に届いたら、冬の夜に家族で囲む鍋が似合う。白菜、豆腐、ねぎを用意して、ポン酢で食べる。あるいは、ごまだれで。素朴な食べ方だからこそ、肉の質が問われる。この牛肉は、その問いに応える品だ。
他の返礼品との組み合わせ
オリーブ牛と一緒に食卓に迎えたいのは、この町の醸造文化を代表する品たちだ。
小豆島の輝という山廃吟醸は、地元の酒蔵が仕込んだ日本酒だ。山廃仕込みの力強さと、吟醸の香りが両立した酒。オリーブ牛の後味の爽やかさと、この酒の深さが共鳴する。晩酌の相棒として、あるいは食事の時間を少し丁寧にしたい夜に。

小豆島のクラフトビールも、この島の新しい顔だ。地元の水と、島の風土を意識した仕込みが特徴。オリーブ牛を焼いて食べる時、あるいは夏の夜に冷やして飲む時、島の気候がグラスの中に映る。
フルーツの年3回定期便は、季節の手当てとして考えたい。小豆島の柑橘類が、春・夏・秋と、三度にわたって家に届く。オリーブ牛を食べた後の、さっぱりとした甘さ。あるいは、朝食の時間に、島の日差しを思い出させる果実。
この町への寄付は、『塩辛い風土が育てた食卓』を、自分の家に迎え入れることだ。醤油蔵の香りは届かないが、その香りが生んだ食べ方は、確かに家の台所に着地する。
