地層の町で、米が育つ理由
美祢は、山に囲まれた盆地だ。四方を中国山地に囲まれ、冬は雪が積もる。市の東部には秋吉台という石灰質のカルスト地形が広がり、地下には秋芳洞のような鍾乳洞が走っている。この町の土は、2億年以上前の地層が露出した、石灰質の大地。
私がこの町を見ているのは、『地質が食卓に着地する場所』としてだ。石灰質の土壌は、水はけがよく、ミネラルが豊富。米作りに適した環境を作る。秋吉台の麓で育つ米は、その地層の恵みを受けている。
ヒノヒカリは、栽培期間中農薬と化学肥料を使わない。この選択は、地質の町だからこそ成り立つ。石灰質の土が、自然な肥沃さを保つ。届いた米を炊くと、粒がしっかり立つ。冬の朝、湯気の中で食べる一杯は、この町の地層の厚みを感じさせる。白米でも玄米でも選べるのは、家の食べ方に合わせるため。毎日の食卓に、無理なく着地する量を選べる。

栗焼酎に、秋の香りを詰める
美祢の産業は、かつて炭鉱と石灰石採掘で成り立っていた。今、その地層の上で、農業が息づいている。梨やゴボウ、ホウレンソウが育つ。そして栗も。

栗焼酎「あつ」は、厚保産の栗を使った地酒だ。栗の香りは、秋吉台の麓の季節を瓶に詰めたもの。晩酌の時間に、ロックで飲むと、栗の甘さが口に広がる。水で割れば、香りが柔らかくなり、食事の邪魔をしない。この町で採れた栗が、焼酎職人の手で別の形になって、家に帰ってくる。地産地消の、最も素朴な形だ。

秋吉台の梨と、米の組み合わせ
秋吉台の東側では、梨栽培も盛んだ。甘太という品種は、この地域の特産。秋の初めに届く梨は、米と一緒に食卓に並ぶ。白いご飯と、甘い梨。季節の移ろいを、二つの食材で感じる。
美祢に寄付すると、この町の地層が育てた食べ物が、季節ごとに家に届く。それは観光ではなく、台所の現実だ。冬の米、秋の梨、晩酌の焼酎。地質の町の食べ方を、自分の家で繰り返すことになる。
