三角州に刻まれた町の輪郭
萩市に入ると、まず地形が目に入る。阿武川が日本海に注ぐ三角州に、江戸時代の城下町が碁盤目状に敷かれている。三方を山に囲まれ、一方を海に開く。この隔絶された地形こそが、長州藩の本拠地として選ばれた理由だった。徳川幕府は、交通に不向きな地を好んだのだ。
今も、その地形は町の骨格を決めている。浜崎町、古萩町、平安古町といった江戸の町名が残る街路を歩けば、当時の商人たちの生活が透けて見える。白壁の土蔵、格子窓、石畳。明治維新を生んだ吉田松陰や高杉晋作たちが歩いた道が、そのまま今も続いている。
萩市の宿泊施設で使えるクーポンは、この町並みの中に身を置く時間をもたらす。城下町の一角に泊まり、朝の静寂の中で町を歩く。夜は、灯りに浮かぶ白壁を眺める。そうした滞在こそが、萩という町を理解する最短距離だ。

離島と山間、多面体の風景
萩市の領域は、中心部の三角州だけではない。日本海に浮かぶ見島、大島、相島、櫃島といった有人島。南に広がる山間部では、むつみ村の千石台地が山口県の大根出荷量の95%を占める。福栄村は米の産地。須佐地区は剣先イカの活イカ漁港として知られている。

一つの市でありながら、十の日常生活圏を持つ。それぞれの地区は、山越え、峠越えで隔てられている。冬の大雪で国道が遮断されることもある。そうした地理的な多様性が、萩市という自治体の本質だ。
より高額のクーポンを選べば、複数の地区を巡る滞在も可能になる。城下町の中心から、山間の集落へ。海沿いの漁村へ。一度の訪問では見尽くせない町の奥行きを、何度かに分けて味わう。そうした旅の選択肢が、ここにはある。

歴史と現在の重ね合わせ
萩市は、幕末から戦前にかけて政財界を動かした人物たちを輩出した。その歴史は、今も町の至るところに刻まれている。松陰神社、高杉晋作の墓、木戸孝允の生家。司馬遼太郎の小説『世に棲む日日』『花神』の舞台となり、大河ドラマ『花燃ゆ』も撮影された。
しかし萩市が推し進めてきたのは、観光地化ではなく、町並みの保全だ。白壁土蔵群は、今も住民が暮らす生きた町である。その中に泊まることは、歴史を訪ねることではなく、現在を生きる町の一部になることだ。朝、地元の人が通る路地を歩き、夜、町家の灯りを見る。そうした日常の中に、萩という町の本質がある。
