日本海の朝、干す手仕事
岩美町の冬は、日本海からの湿った風が山々に当たり、雪と雨が繰り返される。年間降水量は2000ミリを超える。その気候の中で、漁師たちは朝の獲物を塩漬けにし、浜風に干す。いわみ小包(海)に詰まるハタハタ、カレイ、ノドグロ—これらは、岩美の漁港で揚がった魚を、その日のうちに一夜干しにしたものだ。

一夜干しは、塩漬けの時間と干す時間の加減で、身の水分と旨味が濃縮される。ハタハタは小ぶりだが、塩辛さと香ばしさが白飯を進ませる。カレイは淡白な身が、塩と風で引き締まり、焼くと香りが立つ。ノドグロは高級魚だが、一夜干しにすることで、脂の甘さが際立つ。
私の台所では、これらを朝食の焼き魚として、あるいは酒の肴として、季節を通じて重ねる。冬の豪雪の中で、日本海の漁師たちが手をかけた品が、家の食卓に着地する。それは、岩美という町の生業そのものだ。
山の懐から、田村牛
岩美町の中央を蒲生川が流れ、扇ノ山や牛ヶ峰山といった山々が町を囲む。その山間で育つ田村牛は、赤身の質が特徴だ。上すき焼き肉として届く400グラムは、冬の食卓に温かみをもたらす。

すき焼きは、肉の脂と甘辛い割り下が絡み合う調理だが、赤身の牛肉は、その脂の少なさゆえに、割り下の味わいが肉そのものに浸透しやすい。家族で鍋を囲む時、肉を箸でつまみ、卵にくぐらせる。山で育った牛の肉質が、冬の夜を温める。
岩美町は、日本海と山に挟まれた小さな町だ。水産業が主産業とされながらも、山の懐で牛を育てる営みもある。一夜干しと和牛—海と山の両方の恵みが、この町の返礼品に詰まっている。
