広川町は、柑橘の町である
和歌山県の中央北寄り、有田郡に属する広川町。町の中央を広川が流れ、紀伊水道に注ぐ。黒潮暖流の影響を受けた温暖な気候は、太平洋側としては降水量が少なく、柑橘栽培に適している。この町で冬を迎えると、台所に届くのは有田みかんだ。
私がこの町を知ったのは、濱口梧陵の「稲むらの火」の逸話からだった。1854年の安政南海地震の津波から村人を救った梧陵の行動は、防災の歴史として今も町に刻まれている。だが、その同じ土地で、毎年冬になると、農家たちは柑橘を育て、出荷する。津波と復興の記憶が生きる町だからこそ、季節の営みが重い。
有田育ちの完熟有田みかんは、農家直送で届く。発送月を選べるのは、この町の柑橘が出荷期を持つからだ。11月から翌年1月にかけて、熟度を見極めながら収穫される。家に届いたみかんを手に取ると、皮の厚さ、重さで、その年の育ちが分かる。朝食の食卓に、晩酌の脇に、子どもの手に。有田みかんは、冬の家の中で、季節を刻む。

柑橘の選び方——訳あり、家庭用の現実
ふるさと納税の返礼品として「訳あり」「家庭用」と書かれた有田みかんは、決して劣った品ではない。むしろ、農家の現実に近い。形が揃わない、色が濃すぎる、小ぶりである——こうした理由で市場流通から外れた果実が、家庭の食卓では最も活躍する。
皮が厚めなら、マーマレードに。小ぶりなら、子どもが握りやすい。色が濃いのは、糖度が高い証拠だ。農家直送だからこそ、そうした個性が活きる。この町の柑橘農業は、出荷規格に合わせるだけでなく、食べ手の台所まで想像して、品を選んでいる。
冬の晩酌と、海の幸
広川町の返礼品には、柑橘だけでなく、海の幸も並ぶ。湯浅湾の釜揚げしらすは、隣町の湯浅湾で獲れた白子魚を、塩漬けにして釜で揚げたもの。700gという大容量は、家庭用だからこそ実現する量だ。

ご飯に乗せて、酒の肴に、冷奴の上に。しらすは、季節を選ばず、台所に常備できる。有田みかんの甘さと、しらすの塩辛さ。この町の冬の食卓は、山と海の両方を映している。
梅酒の飲み比べセットも、この町の柑橘文化を広げる品だ。紀州梅酒を基調に、ゆず、みかん、蜂蜜、緑茶、赤しその6種。180mlずつの小瓶は、毎晩違う味で晩酌を迎える楽しみを作る。有田みかんの産地だからこそ、みかん酒も自然に選択肢に入る。
熊野牛——内陸の山越しで育つ
広川町の北側には白馬山脈が控える。その山越しで育つ熊野牛も、この町の返礼品として並ぶ。熊野牛のすき焼き・しゃぶしゃぶ用は、肩ロースやロースをスライスしたもの。冬の食卓で、家族が囲む鍋に、この肉は欠かせない。
有田みかんを食べ、しらすを食べ、梅酒を飲み、そして熊野牛を鍋で温める。広川町の返礼品は、季節の営みの中で、一つの食卓を完成させる。