吉野川の水が育てた梨
大淀町は吉野川の右岸に位置する。川沿いの丘陵地に梨園が広がり、特に西部の大阿太高原は梨の産地として知られている。この地形と水が、なぜ梨なのか。吉野川は奈良県を南北に貫く大きな川で、その流域は古くから農業の中心地だった。梨は水を好む果樹だ。根が深く張り、安定した水分を必要とする。大淀町の丘陵地は、川からの湿度と、昼夜の寒暖差を梨に与える。秋が近づくと、この町の梨は糖度を高めていく。
二十世紀梨が届くのは、その収穫期。箱を開けた時、梨特有の香りが立ち上る。皮は黄緑色で、手に取ると程よい重さがある。冷蔵庫で冷やして、食卓に出す。ナイフで半分に切ると、果肉は白く、汁気がある。一口かじると、歯が果肉を押し分け、甘さと酸味が同時に口に広がる。二十世紀梨は、甘いだけでなく、爽やかさを持つ品種だ。秋の夜長、家族で一つの梨をシェアする。そういう食べ方が似合う果実である。

梨狩りの季節、町は動く
大淀町の梨の収穫期には、近鉄吉野線に臨時列車が運行されていたという歴史がある。今は定期列車に「梨狩り号」のヘッドマークが付く。それほど、この町にとって梨は季節の顔なのだ。下市口駅は大阪阿部野橋駅まで約1時間。都市部からのアクセスが良く、秋の休日には梨狩りに訪れる人たちで賑わう。
返礼品として届く梨は、その産地の手で選別されたものだ。農家が丹念に育てた梨が、寄付者の食卓に着地する。3kg、4kg、6kgから選べるのは、家族の人数や食べるペースに合わせるためだ。梨は日持ちがするが、冷蔵庫の中で少しずつ食べるのが、この果実の味わい方だ。毎晩、一切れ、二切れ。秋の夜の、小さな楽しみになる。
大淀町の梨は、吉野川の水と、この地の丘陵地の日差しが育てたものだ。その背景を知って食べると、梨の味わいはより深くなる。