冬の霜が、仕込み水を選ぶ
私が葛城市を訪ねるなら、冬だろう。奈良盆地の東麓に位置するこの町は、冬になると霜が降りるほどに冷え込む。その冷たさが、この町の返礼品を生んだ。
梅乃宿の純米吟醸は、そうした季節の中で仕込まれる。米を磨き、水を引き、低温でゆっくり発酵させる。吟醸造りに必要な冷たさは、葛城の冬そのものだ。年間を通して雨が少ないこの地は、かつてため池が至る所にあった。今は吉野川の分水によって水が十分に供給されているが、その水の清冷さが、酒造りの基盤になっている。

梅乃宿という蔵は、この町で何代にもわたって、米と梅を仕込んできた。純米吟醸は、その仕事の中心にある。晩酌の盃に注ぐとき、あなたの手元には葛城の冬が届く。
梅と、夏の工夫
この蔵の仕事は、米だけではない。梅酒やあらごしみかんのように、地の果実を酒に仕込む技術がある。

梅酒は、青梅と完熟梅をブレンドして熟成させる。その過程で、梅の香りと酸味が、アルコールに溶け込む。ロックで飲めば、梅の粒が舌に残る。ホットで温めれば、冬の夜の台所で、梅の香りが立ち上る。

あらごしみかんは、果肉を残したまま瓶詰めにされる。夏の盛りに、炭酸水で割って飲む。あるいは、かき氷にかける。そうした日常の食卓に、この町の果実加工の手仕事が着地する。
葛城市は、古くから農村地帯だ。メリヤスや靴下の家内工業は衰えたが、農の営みは続いている。梅乃宿の返礼品は、その営みの形を、酒という形で届けるものだ。
