手仕事の町、生駒
生駒市の北部・高山地域には、室町時代から茶筌を作り続ける職人たちがいる。私がこの町を訪れるたびに感じるのは、細い竹を削り、一本一本を組み上げていく手の痕跡だ。その仕事は、村田珠光が茶道を創始した時代にさかのぼる。鷹山宗砌が茶の攪拌道具を作り始め、後土御門天皇に献上されたとき「高穗」の御銘を賜った。以来、高山の職人たちは一子相伝でその技を守ってきた。1736年には『大和志』に高山村の特産物として記録されるほど、この地の仕事は確かなものだった。
茶筌を作る手は、季節の湿度を読み、竹の繊維を感じながら動く。その感覚は、酒を選ぶ目利きにも通じている。生駒は江戸時代、宝山寺の門前町として栄え、大阪庶民の信仰を集めた。その後、鉄道が開通し、大阪への通勤地として急速に都市化した。だが、この町の根底には、ものを丁寧に作り、丁寧に選ぶ文化が息づいている。
晩酌に、季節の移ろいを
山鶴の純米大吟醸は、そうした町の気質を映した一本だ。黒と菫の二種から選べる。黒は甘口、菫はやや甘口。どちらも山田錦を使い、果実香を大切にしている。

届いた瓶を手に取ると、ラベルの色が季節の光に映る。冬の晩酌なら、ぬるめの酒器に注ぎ、ゆっくり時間をかけて飲む。純米大吟醸の香りは、一気に飲み干すものではなく、鼻と舌で何度も確かめるものだ。食卓に置かれた盃の中で、米の甘さと酸のバランスが、夜の静けさの中で立ち上る。
高山の茶筌職人たちが、竹を削る手を止めることなく、今も仕事を続けているように、この酒もまた、丁寧な手仕事の結果だ。生駒に寄付すれば、その町の歴史と現在が、家の食卓に届く。