東海道の肉文化、甲賀で息づく
甲賀は、古くから東海道の宿場町として栄えた土地だ。水口宿、土山宿——旅人たちが行き交う中で、この地の台所には何が積み重ねられたのか。山がちな地形の中、野洲川が流れ、季節ごとに異なる表情を見せる盆地。そこで育つ牛たちは、近江の風土を体に宿している。
近江牛のすき焼き用が届く。モモとバラが混在した500グラム。冬の夜、土鍋を囲む時間を想像してほしい。割り下を張った鍋に、肉を一枚ずつ落とす。火が通る間、野菜を並べ、卵を用意する。肉の脂が割り下に溶け、香りが立ち上る。その瞬間、台所は一つの儀式になる。すき焼きは、家族が同じ鍋を囲む食べ方だ。届いた肉が、その時間を作る。

甲賀の産業は多様だ。信楽焼の窯、製薬企業、茶の産地——だが、この町を訪れた時に最も印象的なのは、山々に囲まれた盆地の中で、人々が何世代にもわたって営んできた営みの厚さである。近江牛もまた、そうした営みの一つだ。東海道を行き来する人々の食卓に上り、やがて地元の家庭の定番になっていった。
肉を選ぶ、季節を選ぶ
切り落としは、日常の炒め物に。焼肉用は、夏の庭での時間に。同じ近江牛でも、部位と調理法で、食卓の表情は変わる。

甲賀に寄付をすると、この牛たちが家に届く。それは単なる食材ではなく、東海道の歴史、盆地の風土、そして台所の時間そのものが、一枚の肉に凝縮されている。冬の夜、春の昼下がり、夏の夕涼み——季節ごとに、この肉をどう食べるか。その選択が、あなたの食卓を作っていく。
