参宮路の町が、松阪牛を育てる理由
玉城町は伊勢市に隣接した、かつての宿場町だ。参宮客が行き交った時代の面影は、田丸城跡に残る石垣や堀に映っている。だが今、この町の顔は、むしろ台所にある。松阪牛の産地として、三重県の食卓を支える存在になっているのだ。
伊勢志摩という地域の中で、玉城町は山と川に囲まれた盆地的な地形をしている。宮川と外城田川が流れ、大仏山を背にした風土は、古くから農畜産の適地だった。そこに京セラやパナソニックといった工業も根付き、町は多面的な産業を持つようになった。だが返礼品として町が推すのは、やはり松阪牛。この選択に、玉城町の自信と誇りが表れている。
すき焼きの季節に、三種の部位を揃える
松阪牛すき焼きセットは、ウデ・モモ・肩ロースの三種を400グラム、一度に手にできる返礼品だ。

すき焼きの鍋を囲む時、肉の部位によって火の通り方も、口の中での溶け方も変わる。ウデは赤身が強く、火を通すと締まる。モモは脂が少なく、さっぱりとした甘みが出る。肩ロースは霜降りが入り、割り下に溶けた脂が鍋全体を包む。三種を一度に揃えることで、一晩の食卓の中で、松阪牛の表情を全部味わえる。
届いた肉は冷凍だから、食べたい日の前夜に冷蔵室に移す。朝、肉を見ると、霜がうっすら付いた状態になっている。その肉を、昼間のうちに常温に戻す。夕方、割り下を仕込み、白菜や長ねぎを切る。秋から冬へ向かう季節、台所の手が自然と動く。
煮込みと小間切れで、日常の食卓へ
松阪牛と玉城豚の煮込みセットは、すき焼きより日常的な使い方ができる。牛すじと小間切れが入っているから、シチューにも、カレーにも、味噌煮込みにも応用できる。玉城豚が合挽ミンチで入っているのも、この町の産業を反映した選択だ。

牛すじは、低温でゆっくり火を通すと、ゼラチン質が溶けて、スープに深みが出る。小間切れは、野菜と一緒に炒めてから煮込むと、肉の香りが全体に広がる。玉城豚のミンチは、牛の濃厚さを和らげ、食べやすくしてくれる。
冷凍のまま、鍋に入れることもできる。朝、冷凍室から出して、夜の調理時間までに半解凍させておけば、火の通りも均等だ。
牛すじで、時間をかけた一品を
松阪牛牛すじ1キログラムは、五パックに分けられている。一パック200グラムずつだから、一度に全部を使う必要がない。
牛すじは、下ゆでに時間がかかる。冷たい水から火にかけ、沸騰したら湯を捨て、肉を洗う。新しい水で再び火にかけ、アクを取りながら一時間以上煮る。その手間を惜しまない人なら、牛すじの旨味は比べようがない。大根と一緒に味噌で煮込めば、冬の定番になる。
五パックに分かれているから、一度に全部を調理する必要はない。一パックを使い、残りは冷凍室に戻す。季節が変わっても、いつでも牛すじの煮込みが作れる。そういう自由度が、返礼品の実用性を高めている。
玉城町の松阪牛は、参宮路の歴史と、現在の産業が交わる地点にある。すき焼きから煮込みまで、この町の肉は、家の食卓に着地する時、初めてその価値を発揮する。
