工業都市の、意外な食の厚み
四日市といえば、コンビナートの煙。公害の歴史。そう思い込んでいる人は多い。だが実際に地図を広げると、この町は伊勢湾から鈴鹿山系まで、海から山まで一貫した地形を持つ。臨海部の工業地帯の背後には、田園と茶畑が広がっている。農業も漁業も、この町の生業の一部だ。
寄付で届く返礼品を見ると、その二面性がはっきり見える。工業都市でありながら、食の選択肢は意外に豊かだ。加藤牧場の黒毛和牛は、松阪牛の品評会で最優秀賞を受けた牧場の肉。ロースと肩ロースが500g×2で届く。

黒毛和牛を家に迎えるとき、私たちは何を期待するか。脂の乗り、柔らかさ、香り。だが本当に大事なのは、その肉がどこで、どう育ったかという背景だ。松阪牛の産地に隣接する四日市の牧場で育った牛。鈴鹿山系の水と、この地の飼料環境が肉質を作る。冷蔵で届いた肉を、焼くなり煮込むなり、家の台所で季節に合わせて使う。冬なら鍋に、春から夏なら焼肉で。一度に全部を使わず、冷凍で保存しながら、何度も食卓に呼び出す。そういう付き合い方ができる量感だ。
四日市の食卓、もう一つの顔
同じ寄付で選べる品々を見ると、この町の食べ方がより立体的に見える。鈴鹿山麓の銘水が育てた米は、小山田地区のこしひかり。毎日の飯の米だ。黒毛和牛と一緒に届けば、ご飯の質も上がる。肉と米、両方が揃うことで、この町の食卓は完成する。

本格焼酎「よかいち」は、芋焼酎。220mlのペットカップが24本。晩酌の相棒だ。黒毛和牛を焼いた夜、冷えた焼酎を傾ける。そういう日常が、この町の寄付で支えられる。

四日市は、名古屋圏に含まれながらも、独自の雇用圏を持つ都市だ。昼間人口が夜間人口を上回る、働く町。そこに住む人たちの食卓は、質素ではなく、実用的で、季節に応じた選択肢を持つ。黒毛和牛も米も焼酎も、すべてそうした台所の現実に根ざしている。
公害を越えた、今の四日市
1960年代から70年代、四日市ぜんそくは日本四大公害の一つとされた。だが環境改善は進み、今では大気汚染物質の濃度も環境基準を達成している。郊外には田園が広がり、蜃気楼さえ見える。その自然の中で育つ農産物、畜産物が、この町の返礼品の根底にある。
工業都市というレッテルだけでは、四日市は語れない。むしろ、工業と農業のバランスが取れた産業都市だからこそ、食卓に届く品々は多様で、実質的だ。黒毛和牛一つとっても、それは単なる高級食材ではなく、この町の風土と生業が一体になった産物なのだ。
