湾に面した町が、地元の果実を蒸留する
美浜町は知多半島の南部、伊勢湾と三河湾の双方に面した小さな町だ。私がこの町を見ると、まず思うのは「水に囲まれた場所」ということ。潮干狩りが盛んで、漁港があり、海の恵みが生活の一部になっている土地。そこに、ここ数年、新しい産業が根付き始めている。
中津ジン ポンカンは、この町で生まれたクラフトジンだ。地元産のポンカンを使い、丁寧に蒸留されている。ジンというと、ロンドンドライやボタニカルといった既成の枠組みで語られることが多いが、ここで作られるものは違う。知多半島の柑橘を主役にして、その土地の味を瓶に詰めようとする試みだ。

クラフトジンの製造は、単なる蒸留ではなく、どの植物をどの順序で、どの温度で加熱するか、という細かな判断の積み重ねだ。ポンカンの香りを活かしながら、スピリッツとしての骨格を保つ。その緊張感のある仕事が、この一本に詰まっている。
食卓に着地する、湾の町の新しい味わい
届いた瓶を開けると、柑橘の香りが立ち上る。ロックで飲めば、ポンカンの甘さと爽やかさが前に出る。ソーダ割りにすれば、夏の晩酌に。カクテルのベースにすれば、バーテンダーの手で新しい表情を見せる。この柔軟性が、クラフトジンの魅力だ。
同じく地元の果実を使った知多露茜は、梅酒だ。國盛という老舗の蔵が、知多の梅を漬け込んだもの。こちらは食前酒として、あるいはロックで、季節の変わり目の晩酌に。梅酒は家庭でも作られるものだが、蔵の手による一本は、時間と温度管理の差が明らかに出る。

イカの鉄板焼きとえびせんべいは、この町の海の産業を代表する品だ。えびせんべいは知多半島の名物で、小えびを塩漬けにして焼き上げたもの。塩辛さと香ばしさが、ジンの爽やかさを引き立てる。食卓に届いた時、これらを並べると、美浜町の湾の風景が見えてくる。
小さな町だからこそ、一つ一つの産業が顔を持つ。漁業、農業、そして新しく根付いた蒸留の仕事。それらが返礼品として家に届く時、単なる「もらい物」ではなく、その町の時間と手仕事の痕跡を受け取ることになる。
