丘陵と水が作った、この町の食べ方
大府市は、かつて衣ヶ浦という遠浅の海だった。江戸時代の干拓で陸地に変わり、その後、愛知用水の開通で丘陵部は一変した。今、この町は名古屋市の南東に隣接し、近郊農業と工業が共存する場所だ。
私がこの町を見ると、まず思うのは「水と土地の履歴」である。かつての海底だった沖積平野は水田に、丘陵部は園芸地帯に、そして古代から中世にかけて陶業が栄えた丘には、今、良質な牧草地と溜池が点在している。その溜池は農業用水を蓄え、丘陵の傾斜地では野菜が育つ。こうした地形と水系が、この町の食べ物を決めている。
下村牛——丘陵で育つ黒毛和牛
下村牛の切り落としは、この町の代表的な返礼品だ。250グラムずつ6パックに分けられた1.5キログラムは、家の冷凍庫に着地しやすい。

丘陵部で育つこの牛は、古い溜池が多く存在する地形と無関係ではない。水が豊かな土地は、牧草地としても適している。切り落としという部位は、焼肉にも、すき焼きにも、炒め物にも使える。小分けパックなら、週に2、3回、夜の食卓に一品加える感覚で消費できる。冷凍のまま鍋に入れても、解凍して炒めても、肉の質感が失われにくい。
黒毛和牛の脂は、常温で白く固まる。だから冬の鍋には向く。春先、気温が上がってきたら、焼肉のタレに漬けて冷蔵庫で一晩寝かせ、翌日の昼に焼く。そうした日常の使い方を想定して、この返礼品は設計されている。
季節の野菜と、もぎたての果実
朝どり完熟いちじくは、丘陵部の園芸地帯を象徴する品だ。愛知用水の開通後、この町の丘陵は急速に園芸用地へと変わった。いちじくは、その転換の中で根付いた果樹の一つである。秋口、9月から10月にかけて、サマーレッドという品種は完熟すると、皮が深い紫色になり、割ると中は赤い。朝どりで届くそれは、常温で数日は持つが、冷蔵庫に入れると甘みが落ちる。だから届いたその日か翌日に、そのまま食べるのが正解だ。ジャムにするなら、砂糖漬けにして瓶詰めにすれば、冬の朝食が変わる。

町の交通と、旅の拠点として
楽天トラベルクーポンは、この町が東海道本線と武豊線の分岐点であり、古来より交通の要衝だったという歴史と無関係ではない。大府駅は、名古屋への通勤圏でありながら、知多半島への玄関口でもある。寄付額に応じて10,000円から30,000円のクーポンが選べるので、近隣の宿泊施設での滞在に充てられる。
編集後記
大府市の返礼品を見ていて気づくのは、どれもが「日常の食卓に着地する」ことを前提に選ばれているということだ。高級感よりも、使い切れる量。一度の食事ではなく、何度も食卓に上る想定。丘陵と干拓地という地形が育てた近郊農業と畜産の町だからこそ、そうした実用性が返礼品に反映されている。