濃尾平野の水と麦が出会う場所
稲沢市は、古代から尾張国の政治の中心だった。その歴史の重さは今も、尾張大国霊神社や国分寺跡に刻まれている。だが私がこの町を見る時、もう一つの顔が浮かぶ。植木・苗木の産地として全国に知られた、手を動かす産業の町だ。
濃尾平野の中央に位置する稲沢は、木曽川や五条川といった一級河川に恵まれている。その水が、もう一つの手仕事を支えている。眠れる黒猫という麦焼酎だ。

麦焼酎は、麦を蒸し、麹を仕込み、酵母を加えて発酵させ、蒸留する。その過程は、植木を育てるのと同じくらい時間と手間がかかる。種から芽が出るまで、麦が糖化するまで、アルコールが立ち上るまで——どれも待つことが仕事だ。稲沢の職人たちは、その待ちの時間を知っている。
晩酌の相棒として
届いた焼酎を、冷たいグラスに注ぐ。麦の香りが立ち上る。水で割るもよし、ロックで飲むもよし。夜の食卓に、この一杯があると、その日の疲れが少し違う形で落ちていく。

稲沢の返礼品は、この町の産業の多様さを映している。植木の産地として知られながら、同時に食品製造の拠点でもある。明治乳業の工場、シヤチハタの生産本部、そして地元の酒造。ものづくりの町が、毎晩の晩酌を支える。それが稲沢だ。