遠州灘の冬、生しらすの季節
御前崎は太平洋に突き出た岬の町だ。遠州灘という名前の海が、この町の暮らしを支えている。冬の朝、漁港に揚がる生しらすは、透き通った白さで、塩辛い海の香りをそのまま運んでくる。
生しらす600gは、100gずつ小分けされている。これは台所の現実を知った作り手の配慮だ。生しらすは鮮度が命で、一度解凍したら使い切る必要がある。家族の人数、その日の食卓の予定に合わせて、必要な分だけ取り出せる。朝、ご飯の上に乗せて、醤油をかけて、生姜をひとつまみ。それだけで、丼一杯が完成する。冬の朝食は、この透明感のある白さで始まる。

生しらすは、そのまま食べるのが最も素直だ。塩辛さ、甘さ、海の深さが一度に口に入る。冷凍されているから、届いてから数週間は冷凍庫に置いておける。週末の朝、少し贅沢な朝食にしたい時。子どもたちが帰ってきた時の、ちょっとした特別感。そういう日常の中で、御前崎の海が食卓に着地する。
釜揚げしらすとの出会い
同じ御前崎産でも、生しらすと釜揚げしらすのセットを選ぶなら、食べ方の幅が広がる。釜揚げしらすは、生しらすを塩漬けにして加熱したもの。色は薄いピンク色に変わり、塩辛さが少し和らぐ。生しらすより日持ちがよく、冷蔵庫でも数日は保つ。

朝は生しらす丼で、昼は釜揚げしらすをおにぎりの具に。夜は、釜揚げしらすを大根おろしと合わせて、冷たい蕎麦の上に乗せる。同じ海の産物でも、加熱の有無で、食べ方が変わる。御前崎の漁師たちは、この違いを知っていて、季節ごと、その日の海の様子ごとに、どちらを獲るか、どう加工するかを決めてきた。

遠州灘は、強い風で知られている。冬の「遠州のからっ風」は、海の塩分を陸に運び、この町の気候を厳しくする。その同じ海が、冬に最も美しい生しらすを育てる。小さな白い粒の中に、御前崎の風土が詰まっている。
