濃尾平野の北西端で、肉を焼く
神戸町は山がない。揖斐川が流れ、周囲には山が迫っているが、町域そのものは平坦だ。バラやアルストロメリア、小松菜といった花卉と野菜で知られるこの町が、なぜ飛騨牛を返礼品にしているのか。それは地理と流通の現実だ。
岐阜県の中央部に位置する神戸町は、飛騨地方とも濃尾平野とも接する場所にある。養老線で大垣と結ばれ、東海環状自動車道も近い。こうした立地が、飛騨の良質な牛肉を、この町経由で全国に届ける道を作った。
飛騨牛A5等級のサーロインステーキは、200gずつ2枚。夜の食卓に、週末の夕食に、ちょうどいい量だ。冷凍で届くから、食べたい日に解凍して焼く。塩をふって、強火で表面を焼き、中はレアに。肉汁が流れ出す瞬間が、この返礼品の本質だ。

A5等級というのは、霜降りの入り方と色つやで最高ランクに評価された牛肉。脂が細かく入り込んでいるから、焼くと脂が溶けて、肉そのものの甘みが引き出される。家の台所の小さなフライパンでも、ステーキハウスのような焼き上がりになる。
小さな町の、大きな選択肢
同じA5等級でも、サイコロステーキなら、炒め物や丼に。ヒレステーキなら、赤身の上品さを味わう。どれを選んでも、飛騨の牧場で育った牛の肉質は変わらない。

神戸町は、かつて比叡山延暦寺の荘園で、平野庄と呼ばれていた。最澄が通った時代から、この土地は流通の要所だった。今、その役割は返礼品という形で続いている。寄付をすれば、飛騨の肉が、あなたの食卓に着地する。それだけのことだが、小さな町だからこそ、その一本の線が見える。