富士川が削った谷間に湯が湧く
身延町に入ると、富士川が深く刻んだ谷が目に入る。町の西側は本栖湖に向かって山が高くなり、東側は富士川に沿って細長く伸びている。その川沿いの下部地域に、古くから温泉が湧いている。
下部温泉は、戦国期から知られた湯だ。山間の狭い谷間に、江戸時代には宿場町として機能し、参詣者や旅人が立ち寄った。身延山久遠寺への門前町として栄えた身延の町並みとは異なり、下部は富士川という自然の通路に沿って、静かに湯を守ってきた場所だ。
下部ホテルのペア宿泊は、その温泉地の中心にある。創作会席料理と温泉——山間の町が、季節の食材と湯で客をもてなす形だ。

渓流の季節を食卓に
旧下部町ではアイガモ農法による農業が行われ、毛無山の麓では山菜や川魚が採れる季節がある。創作会席とは、そうした地の恵みを、料理人が季節ごとに組み立てるということだ。

冬の夜、温泉に浸かり、地の食材で作られた料理を前にする。富士川の音が遠く聞こえる。身延町は日蓮宗の総本山で知られるが、この町の別の顔は、山と川に寄り添う温泉地だ。寄付すれば、その両面を一度に味わえる。
