門前町の米作り
彌彦神社の鳥居をくぐる参拝客の足が絶えない弥彦村。その門前町の背後には、弥彦山を水源とする水田が広がっている。私がこの村を訪れるたびに感じるのは、観光地としての顔の奥に、農業の営みがしっかり根ざしているということだ。
伊彌彦米は、その水と土地を背景に育つコシヒカリだ。特別栽培という枠組みは、農薬と化学肥料を減らす約束を意味する。つまり、この米を炊く時点で、作り手の手間がすでに家の食卓に届いているということ。白く炊き上がった粒は、噛むたびに甘みが静かに広がる。朝食の味噌汁の具、昼の弁当、夜の定食——季節を問わず、毎日の米として選ぶ人が多いのは、派手さより信頼を積み重ねた結果だと思う。

山田錦が育つ条件
同じ弥彦の風土から生まれるのが、泉流の純米大吟醸だ。弥彦産の山田錦を100%使った酒。山田錦は酒造好適米として知られ、米の中心部を磨いて仕込む大吟醸は、その米の質に全てが委ねられる。

晩酌の盃に注ぐと、香りが立ち上る。冷やして飲めば、米の甘さと酸のバランスが心地よい。温めれば、また違う表情を見せる。桐箱に入った状態で届くので、贈り物としても、自分へのご褒美としても、開ける時点で儀式めいた気分になる。
観光地であり、農村であること
弥彦村は合併を拒み、単独で町づくりを続けてきた。その選択の背景には、この村が何であるかを自分たちで決めたいという意志があったのだろう。彌彦神社の門前町として栄える一方で、米と酒という農産物を丁寧に作り続ける。その両立が、この村の顔だと私は見ている。
返礼品として届く米と酒は、観光客向けの土産ではなく、毎日の食卓に根ざしたものだ。寄付を通じて、その営みを支える選択ができる。