山の斜面で育つ芋、村の手で仕込む焼酎
東京都の本土で唯一の村、檜原。人口は2000人に満たず、面積の93%以上が林野という、山に抱かれた場所だ。秋川の上流に沿って、いくつかの集落が点在している。
私がこの村を見ると、まず思うのは「続いている」ということだ。1889年の立村から400年以上、一度も合併せず、村制のままで自治を守り続けている。江戸時代には炭焼きと林業で生計を立て、木材を筏で江戸へ流した。その後、時代が変わっても、山の仕事は続いた。
今、檜原の農業の中心は芋類だ。山の斜面の日当たりの良い場所で、水はけの良い土地を活かしてジャガイモやコンニャクイモが育つ。冬の寒さは都心より厳しく、降雪量も多い。そうした気候が、芋に何をもたらすのか。
檜原産じゃがいも焼酎「ひ乃はら物語」は、その芋を蒸留した酒だ。25度という度数は、晩酌に手を伸ばしやすい。冷やして、あるいはお湯割りで。届いた瓶を手にすれば、山の水と、村の人の手が、そこに詰まっていることが感じられる。

村の産業は、手仕事の積み重ね
檜原の経済を支えるのは、多様な手仕事だ。採石業、建設業、林業請負ベンチャーといった大きな産業の傍ら、コンニャクや豆腐、おやき、漬物といった食品加工が行われている。木工品、陶芸品、竹炭、草木染め、刺し子といった工芸品や手芸品の製作も続いている。

どれもが、山の資源と、冷たい水と、人の手を必要とする仕事だ。焼酎もまた、その一つだ。芋を育て、収穫し、蒸留する。その過程の一つ一つが、村の人の判断と経験に支えられている。
寄付をすれば、その焼酎が家に届く。ラベルには「ひ乃はら物語」と書かれている。それは、この村が400年以上かけて紡いできた、仕事と暮らしの物語でもある。
