隅田川が区の北を流れる、東京の縁
荒川区は東西に細長い。北側の区境は隅田川に一致する。かつてこの川は「荒川」と呼ばれていた。今は名前を失ったが、川の存在は変わらない。低地で平坦な地形。標高は大部分が0~3メートル。江戸時代は農村だったこの土地が、明治以降、荒川の水を使う工場で産業化した。その後、工場跡地は再開発され、今は大規模なマンションが建つ。人口も増えた。
南千住、日暮里、町屋。駅名を聞けば、東京の人間なら誰もが知っている。だが、この区そのものを訪れる人は少ない。通過する人が大半だ。山手線、常磐線、都電荒川線。複数の路線が走り、交通の結節点になっている。だからこそ、この区は「泊まる場所」というより「経由地」として機能してきた。
東京の奥へ向かう前に、この町に泊まる
荒川区の宿泊クーポンは、そうした立ち位置を逆手に取る返礼品だ。上野、浅草、スカイツリーへ向かう前に。あるいは北へ向かう前に。この区の対象施設で一泊する。都電の音が聞こえる夜。隅田川の水音。江戸から続く町並みの片隅で、旅の準備をする。

寄付額に応じて、3000円分、4000円分のクーポンが手元に届く。東京の中心部へのアクセスは良い。だが、この区自体は静かだ。繊維街として知られる日暮里。あらかわ遊園。泪橋。矢吹丈がボクシングを学んだ丹下のジムがあった場所。そうした固有の風景がある。

旅人にとって、宿泊施設は単なる寝床ではない。その町を知るための入口だ。1000円分から始めて、何度も訪れるのもいい。あるいは4000円分で、少し長く滞在するのもいい。隅田川沿いの、小さな区。東京の北東の角。そこに泊まることで、初めて見える風景がある。

