丘陵地の奥へ、夷隅川に沿って
房総丘陵の中腹に位置する大多喜町。森が面積の七割を占める土地だ。南西部は山勝ちで、北東に向かうほど標高が下がる。その地形の中を夷隅川が蛇行しながら北東へ流れ、養老渓谷を刻んでいる。
戦国から江戸へ。本多忠勝が城主だった時代、この町は城下町として整備された。その後、衰退と再生を繰り返しながら、今も丘陵地の奥に静かに息づいている。
1965年、漫画家つげ義春と白土三平がこの町に滞在した。夷隅川のよどんだ流れ、旅館の窓から見える天気雨のような光、柱時計の振り子。そうした日常の風景が、つげの筆を動かした。『沼』『初茸がり』『紅い花』『西部田村事件』—— 彼の代表作の多くは、この町で生まれた。
湯に浸かり、物語の痕跡をたどる
養老渓谷の宿泊券は、その町への入口だ。

養老渓谷温泉は、この丘陵地の懐に湧く。秋の紅葉、冬の静寂、春の新緑—— 季節ごとに表情を変える渓谷の中で、湯に浸かる。粟又の滝、千代の滝、万代の滝。滝めぐりの遊歩道を歩けば、つげが見たであろう水音と苔の匂いが身体を包む。

町内には十数軒の宿がある。その中には、つげと白土が定宿にした旅館の痕跡も残る。大屋旅館は江戸時代から続く老舗で、正岡子規も泊まった。つげの作品『リアリズムの宿』で理想的な宿として描かれた場所でもある。
宿泊券を手にすれば、あなたも城下町の谷間に降りていく。夷隅川の流れを聞きながら、温泉に浸かり、朝の静寂の中で目覚める。そうした時間の中で、この町が漫画家たちに与えた何かが、少しだけ伝わるかもしれない。
返礼品は、町内の宿で使える。養老渓谷の湯、滝めぐりの道、城下町の歴史。すべてが、この一枚の券の向こう側にある。
