冷たい風と清流が育てる肉質
埼玉県の最北端、上里町。群馬県との県境を神流川と烏川に挟まれた、町内全域が平地という珍しい地形だ。冬から春先にかけて、北西から冷たく乾燥した風が吹き抜ける。農家たちはカシやケヤキの屋敷林を北側に植えて、その風を防いできた。
この風と、水の綺麗さで知られる神流川。この環境が、彩さい牛を育てている。サーロイン肉250グラムは、ステーキとして焼くのに最適な厚さだ。冷蔵で届いた肉を、常温に戻してから強火で焼く。表面がカリッと焼けて、中はほのかにピンク色が残る火加減。塩とこしょうだけで、肉の甘みが引き出される。

上里町は、かつて三国街道の起点となった交通の要所だった。江戸時代、毘沙吐の河岸からは舟で貨物が運ばれ、毎年鮎や鮭が献上されていた。その清流の伝統は、今も町の農業を支えている。
食卓に届く、一枚の肉
ステーキ用のサーロインは、家族の食卓に「今夜は特別」という空気をもたらす。焼き上がった肉を切ると、肉汁が流れ出す。それを白いご飯に落とし、一口食べる。その瞬間、上里町の風と水が、家の台所に着地する。
冷たい風が吹く季節、あるいは春先の新緑の時期。どの季節に食べても、この肉は上里町の環境を体で感じさせてくれる。250グラムという量は、夫婦で、あるいは家族で分け合うのにちょうどいい。焼く手間も、食べる時間も、短くて濃い。
