水が自噴する町で、酒が生まれる
横手盆地の東側、奥羽山脈を背に、丸子川が形成した扇状地に美郷町はある。この地形が生んだのが、町の最大の資産——地下水だ。六郷扇状地の扇端部では、地下水が自噴する。「水の郷百選」に選ばれた六郷湧水群は、単なる観光資源ではなく、この町の産業と食卓を支える根っこだ。
江戸の享保年間、六郷川内池・高野の500軒中19軒が酒屋だったという記録がある。名水と秋田米——この二つが揃った土地では、自然と酒造りが栄える。その伝統を今に継ぐのが、栗林酒造店の春霞だ。純米吟醸、華兆。晩酌の盃に注ぐと、米の甘さと水の清涼感が一度に立ち上る。冷やして飲めば、秋田の夜の静けさが似合う一本。この酒を作る水は、町の地下から湧き出たものだ。

米作りの季節、水が支える
扇状地の扇央部は、かつて水の得にくい土地だった。戦後、田沢疏水の開通によって、ここも水田化が進んだ。今、美郷町の農業は米を中心に回っている。
あきたこまち特別栽培米は、この町の水と土が育てた白米だ。5kg単位で届く。炊きたての湯気の中に、米の香りが立つ。毎日の食卓に、この米を置くことは、美郷町の地下水脈を家に引き込むことに近い。特別栽培という手間をかけた米だからこそ、素材の味わいが活きる。塩辛いおかずより、米そのものを味わう食べ方が似合う。

季節の手当てと、町の多面性
米と酒だけが、この町ではない。天狗森丘陵では和牛の飼育が、金沢地区・飯詰地区ではリンゴの栽培が行われている。季節の産直詰め合わせは、そうした多様な産物を一度に家に届ける。野菜、山菜、果物、お菓子——季節ごとに内容が変わる詰め合わせは、町の台所の季節感をそのまま映す。何が入っているか、届くまで分からない楽しみもある。
美郷町は2004年、千畑町・六郷町・仙南村の合併で生まれた町だ。三つの旧町村の産業と風土が、今も町の中に息づいている。返礼品を通じて、その重層性に触れることができる。
