網走湖の底から、季節の手当てが始まる
大空町は、女満別空港を持つ北海道オホーツク地方の小さな町だ。2006年に女満別町と東藻琴村が合併して生まれた。町の名前は「澄み切った大空、その下に広がる実り豊かな大地」を意味するという。その言葉通り、この町は台地と湿地、そして網走湖という水辺に支えられている。
私がこの町で最初に目を向けるのは、網走湖だ。寒冷な気候と内水面漁業の伝統が、ここでは特別な食材を育ててきた。網走湖産の大粒天然大和しじみは、その湖底の砂地で育つ。1.5キロという量は、一家の冬の味噌汁を何度も支える。しじみは冷凍保存もきくから、届いた時点で小分けにして冷凍室へ。朝の味噌汁に、酒蒸しに、佃煮に。塩辛い湖の底で育ったしじみの身は濃い。出汁が深い。そういう食材だ。

9月には町でしらうお祭りが開かれるほど、網走湖は漁業の中心だ。ワカサギ、シジミ、シラウオ、コイ。季節ごとに異なる魚が、この湖から食卓へ届く。しじみを選ぶ理由は、その保存性と、毎日の食卓への着地のしやすさにある。
台地が育てた牛、食卓に届くまで
一方、町の高台では畑作が発達してきた。麦、ジャガイモ、テンサイ。そしてその台地で育つのが、芝桜和牛の切り落としだ。

気温が低く、病害虫が発生しにくい気象条件。この環境は、農薬を抑えた安全な農作物を育てるだけでなく、牛の飼育にも適している。切り落としという形態は、家庭の食卓にとって実用的だ。500グラムから2キロまで選べるというのは、一人暮らしから家族まで、その時々の食べ方に応じられるということ。すき焼き、牛丼、炒め物。冷凍で届いたら、使う分だけ解凍する。北海道の寒冷地で育った牛肉は、脂の質が異なる。

町の産業は農業と酪農、そして内水面漁業で成り立っている。ナチュラルチーズなどの加工乳製品も多く生産されている。つまり、この町の返礼品は、その産業構造そのものを映している。
小さな町の、積み重ねた風景
大空町は人口7000人に満たない。合併から18年、この町は女満別空港という「空の玄関」を持ちながら、その足元では静かに農業と漁業を続けている。メルヘンの丘、芝桜公園、藻琴山。観光地としての顔もあるが、本質は、台地と湿地、湖という地形が育てた食の町だ。
しじみと和牛。どちらも、この町の気候と地形がなければ存在しない。寄付して届く返礼品は、単なる商品ではなく、その町で何世代にもわたって続いてきた営みの、現在形だ。
