湿原の町が、なぜ鮭の卵を丁寧に漬けるのか
豊富町は、日本海に面したサロベツ原野の南端に位置する。ラムサール条約に登録された広大な湿地帯が、町の北側に広がっている。この地形が生んだのは、酪農と林業を基幹とする産業だ。だが、町の返礼品を見ると、もう一つの顔が浮かぶ。稚咲内漁港で水揚げされるホッキ貝、そして秋の鮭だ。
日本海の季節の恵みを、塩漬けにして保存する。それが筋子である。ひとくち手まり筋子は、秋鮭の卵を一粒一粒丁寧に塩漬けにしたもの。容器を開けた時、粒の透明感と、塩辛さが鼻をくすぐる。白いご飯の上に、ひとさじ。あるいは、冷や奴の上に。秋から冬へ向かう食卓で、この町の漁港の仕事が、家の食べ方に着地する。

筋子は、一度塩漬けにされることで、日持ちが生まれる。北海道の冬は長く、新鮮な魚卵を毎日手に入れることはできない。だからこそ、塩漬けという手仕事が、この町の台所に根付いてきたのだろう。
定期便で、季節の鮭を味わい尽くす
定期便セットAは、三ヶ月にわたって筋子と数の子、鮭の塩漬けが届く。秋口から冬へ、季節が移ろう中で、毎月異なる塩漬けの表情を味わう。一度に大量に届くのではなく、月ごとに新しい味わいが家に着く。冷蔵庫の奥に、いつも秋鮭の仕事が眠っている感覚だ。

豊富町の漁業は、稚咲内漁港を中心に営まれている。日本海の潮流が、この町の沿岸に豊かな漁場をもたらす。その季節の営みを、塩漬けという保存の技術で、家庭の食卓へ届ける。それが、この町の返礼品の本質である。
温泉と酪農の町で、海の恵みを受け取る
豊富町は、日本最北の温泉郷として知られている。だが、町の産業の中心は、実は酪農だ。乳牛飼育頭数は人口の四倍、年間出荷乳量は七万二千トンに及ぶ。豊富牛乳のブランドで、道内に広く流通している。
そうした酪農地帯の中で、海との接点は限定的に見えるかもしれない。だが、秋になると、日本海から鮭が遡上する。その卵を塩漬けにする仕事は、この町の漁業者たちが、季節ごとに繰り返してきた営みだ。
楽天トラベルクーポンを使って、豊富温泉に泊まり、朝食で筋子をご飯にのせる。そうした過ごし方も、この町の返礼品が誘う一つの風景である。温泉で身体を温め、海の塩漬けで季節を味わう。湿原と酪農地帯に囲まれた町の、静かな冬の過ごし方だ。
