山に囲まれた町の、肉の話
美深は、西の天塩山地と東の北見山地に挟まれた谷間の町だ。天塩川が南北に流れ、冬は年平均888センチの雪が積もる。真冬日が85日を超え、マイナス30度を下回る夜も珍しくない。そういう土地で、牛を育てるということ。
美深の黒牛カルビ焼肉は、そうした風土の中で育った肉だ。焼肉用に切られた2キロ分は、家族で何度も食卓に上る量。冬の夜、ホットプレートを囲んで焼く。脂が落ちて、炭火のような香りが立つ。肉が縮む音を聞きながら、家族の誰かが「もう一枚」と箸を伸ばす。そういう日常の繰り返しが、この返礼品の本当の使い方だと思う。

豪雪地帯の農業・酪農・林業が基幹産業の町で、黒牛の飼育も、その風土に根ざした営みの一つ。冬の長さ、雪の重さ、それでも育つ牧草。そうした条件の中で、肉になるまでの時間がある。
晩酌の相棒、地ビールの選択肢
焼肉の夜に、美深のクラフトビール定番3種を合わせるのも、この町の返礼品の使い方の一つ。3本のセットは、試し飲みにちょうどいい。定番3種とあるから、その町の醸造所が「これが基本」と考える味わいが詰まっている。焼肉の脂を流す一杯、あるいは食後の静かな時間の一杯。地ビールは、その土地の水と、作り手の手仕事が瓶に詰まった飲み物だ。

黒牛のサーロインステーキは、焼肉とは違う食べ方の提案。厚めに切られたステーキは、フライパンやグリルで、肉の表面をしっかり焼く。中はレアに、外はカリッと。塩とコショウだけで、肉の味を引き出す。こちらは、特別な夜の食卓向け。誕生日や、何かの節目に、家族で分け合う肉。
美深の冬は長く、厳しい。だからこそ、台所に肉が届く喜びは、単なる食べ物の到着ではなく、その土地で育った生き物が、家の食卓に着地する瞬間なのだ。